「寝つけない夜に効く、“整える”という選択。」働く人のための睡眠の話
- stayfitclinic
- 5月20日
- 読了時間: 6分
こんにちは。Stay Fit Clinic院長の薮野淳也です。
外来でも、産業医の現場でも、たくさんの「体調不良」に出会ってきました。
そして私は、ある共通点に気づきました、それは体の不調は、まず「睡眠」に表れる。
食欲が落ちるよりも、気分が沈むよりも、
「寝つけない」「朝早く起きてしまう」「起きても疲れが残る」といった“眠りの質の変化”が、
実は一番早く現れるサインだったりするのです。

「眠れていない人」が、増えています
2023年に厚生労働省が発表した『健康づくりのための睡眠ガイド』では、
特に30〜50代の働く世代で、6時間未満の睡眠者が過半数というデータが出ています。
また、「30代女性では約6割が短時間睡眠者」、「仕事・スマホ・夜型生活などにより、睡眠時間が奪われている」とされています。
“しっかり眠れた”と実感できないまま朝を迎え、
疲労・集中力の低下・感情の波を抱えながら、私たちは日々を過ごしている。
エビデンスでは6時間以上の睡眠が推奨されていますが、仕事や家庭などライフスタイルの様々な要因が睡眠時間を短くしていると考えられます。
睡眠とは「回復」と「再生」の時間です
睡眠中、体と脳ではこんなことが行われています:
疲労物質の分解と排出
自律神経・ホルモンの調整
記憶や感情の整理
免疫機能の回復
つまり、「よく眠れること」は、
次の日を“きちんと生きる”ための準備そのものです。
睡眠を整える5つの習慣
では、どんな行動が「よく眠る」につながるのか。
厚労省のガイドでは、次のように示されています。
1. 起きる時間を毎日同じにする
睡眠は「就寝時間」より「起床時間」の安定が鍵。体内時計が整います。
2. 就寝前の光と情報を減らす
スマホやPCの光は脳を覚醒させます。照明は暗め、静かな空間に。
3. 朝の光を浴びる
起床後1時間以内に太陽光を浴びると、夜に自然な眠気が来ます。
4. 朝食はしっかり食べ、寝る直前の夜食は控える
消化活動が終わってから眠るほうが、深い睡眠につながります。
5. 日中に適度な運動を取り入れる自律神経が整い、夜の寝つきがよくなります。
これらは、特別なことではありません。
日常の中で“選び直す”だけで、眠りの質は必ず変わってきます。
良質な睡眠は「環境」から始まる
眠る力は、“場所”によって左右されます。
室温:夏25℃前後/冬22℃前後
湿度:50〜60%
光と音:できるだけ静かで暗く
寝具:自分の体型・体温・睡眠スタイルに合ったものを
古い枕、硬すぎるマットレス、乾燥しすぎた空気──
眠れない理由は意外と「すぐそこ」にあるかもしれません。
運動・食事の習慣と睡眠の関係
日中の過ごし方が、夜の眠りを決めます。
● 運動の効果
中~高強度の運動は主観的な睡眠の質、入眠潜時や睡眠時間、睡眠効率を改善します。
日中に20〜30分の中等度運動を取り入れるだけで、夜の睡眠が深くなり、覚醒が減るという報告があります。
CrossFit Aoyamaでは、「眠りの質を高める運動習慣」として、忙しいビジネスパーソンでも継続できるメニューを提供しています。
● 食事のポイント
寝る直前の食事は避ける
空腹すぎる状態もNG
消化のいい食事を意識する
カフェインは就寝6時間前から控える
朝の日光浴が体内時計を整えるのと同様に、朝食をしっかりとることも体内リズムの調整に役立ちます。
就寝前の夜食や間食は、朝食の⽋食と同様に体内時計を後退させ、翌朝の睡眠休養感や主観的睡眠の質を低下させることが報告されています。
運動と食事、この2つの積み重ねが、“眠れる体”をつくります。
アルコール・カフェインと眠りの落とし穴
眠る前の1杯。
なんとなく「リラックスできる」と感じている方も多いかもしれません。
でも、アルコールは深い眠りを妨げ、中途覚醒を増やすとされています。
同じように、夕方以降のコーヒーやエナジードリンクも、
眠りを浅くしてしまう原因になります。
一時的なリラックスより、長く回復できる眠りを選びませんか?
ライフステージと睡眠の課題(妊娠・子育て・更年期)
ライフステージの変化にともない、「眠りにくさ」は誰にでも訪れます。
たとえば、妊娠中はホルモンバランスの変化や頻尿、腰痛などが重なり、睡眠の質が大きく乱れがちです。
この時期は、横向きで眠る姿勢をとったり、就寝前の軽いストレッチで緊張をゆるめたりすることで、少しでも快適な睡眠につながることがあります。
室温や寝具を整えるなど、環境の工夫も効果的です。
子育て中には、夜間授乳やお子さんの夜泣きによる断続的な睡眠が避けられない時期もあります。
そんなときは、昼間に短時間でも仮眠をとることや、パートナーとの交代制で負担を分散することが、心身を守る鍵になります。
完璧な連続睡眠を目指すより、「少しずつ休む」意識が大切です。
また、更年期にはホットフラッシュ(発汗・ほてり)や気分の浮き沈みといった自律神経の不安定さが睡眠に影響を与えます。
寝具の通気性を見直す、冷却グッズを活用する、あるいは日中の軽い運動を習慣にすることで、徐々に睡眠の質を取り戻していけることがあります。
どの時期も、「ちゃんと眠れない」のはあなたのせいではありません。
環境も体も心も変わるからこそ、眠り方も変えていいのです。
そして、その変化に対応する知恵や選択肢を知っておくことが、健やかな毎日につながっていきます。
それでも眠れないときは、相談してください
眠れない理由は、ストレス、環境、ホルモン、仕事、孤独、考えすぎ──いくつもの要素が絡んでいます。
でも、自分ひとりでは見つけられない解決策も、誰かと一緒なら見えてくると思っています。
あなたの眠れなさに、理由があるはずです。
それを一緒に整理していくのが、専門家の役割です。
Stay Fit Clinicは銀座線外苑前駅徒歩3分の立地にあるビジネスパーソンのための内科心療内科です。
働く人々のお困りごとを解決するのが得意です。
初診予約はこちらをご覧ください。
睡眠は「努力」じゃなくて、「仕組み」で整える時代へ
起きる時間を整える
眠れる環境をつくる
食べ方・動き方を見直す
専門家と話してみる
これらは、どれも“がんばらない整え方”です。
眠れない夜が続くと、心も体も置いていかれます。
でも、眠れるようになると、ちゃんと今日に戻ってこられる。
眠りは、あなたの「毎日を充実させる力」になる。
それを、まずは知っておいてほしいなと思います。
Stay Fit Clinic 院長 薮野淳也
参考文献
厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』定運動療法施設)
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