長時間労働で不調になる前に|過重労働と産業医の役割
- stayfitclinic

- 11月13日
- 読了時間: 4分
更新日:11月18日
産業医として企業を訪問したり、心療内科で診察する中で、「月100時間を超える残業をしていた」「長時間労働が常態化している」といった相談に今も多く出会います。
今回は法制度と現場の実態を交えながら、過重労働のリスクと産業医の役割をわかりやすくお伝えします。

長時間労働の法的ルールとは?|労働基準法と労働安全衛生法
まず知っておきたいのが、労働時間の上限は法律で明確に定められているということです。
【労働基準法の規定】
労働基準法では、原則として
1日8時間・週40時間を超えて労働させてはいけない(第32条)
しかし、いわゆる36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結すれば、一定の上限まで残業が可能になります。
上限は以下の通りです(2019年4月改正後):
条件 | 上限時間 |
通常 | 月45時間・年360時間 |
特別条項あり | 年720時間以内、かつ |
① 単月100時間未満(休日含む) | |
② 2~6か月平均80時間以内 |
つまり、残業時間が100時間を超えることは、原則違法です。
【労働安全衛生法の規定】
そして、もう一つ重要なのが労働安全衛生法 第66条の8による「医師による面接指導」の義務です。
以下の条件を満たした場合、企業は産業医による面談を実施しなければなりません。
1か月の時間外労働が100時間超(休日含む)かつ疲労の蓄積を認めた時
または80時間超で労働者が申し出た場合
過重労働のリスクは「命に関わる問題」
労基法違反や安衛法の不履行も問題ですが、もっと深刻なのはその健康リスクです。
過重労働がもたらすもの:
脳・心臓疾患(脳梗塞、心筋梗塞など)
メンタル不調(うつ病、不眠、適応障害)
労災認定の対象(「過労死ライン」は80時間以上)
私生活の破綻(睡眠・運動・人間関係の断絶)
心身ともに限界を迎えるまで、本人が異変に気づけないケースも多く、「まだ大丈夫」が一番危険です。
産業医の役割とは?|予防から提言まで
産業医は、過重労働対策において個人にも組織にも介入できる専門職です。
【1】面接指導(労働安全衛生法)
法令に基づいて、産業医は以下の点を確認・助言します:
睡眠時間・生活リズムの乱れ
疲労の蓄積、倦怠感、身体症状
メンタルの変化(気分の落ち込み、不安感)
職場環境と業務内容
必要に応じて、
医療機関の受診勧奨
業務軽減の提案
休職勧告(労務管理と連動)
を行います。
【2】組織への改善勧告(労安法第13条)
産業医は、事業者に対して職場全体の構造的課題を指摘し、改善提案することができます。
たとえば:
業務負荷が特定部署に偏っている
残業前提の働き方が黙認されている
名ばかりの時短・裁量労働が常態化している
勤怠管理と実態が乖離している
など。
産業医の所見は衛生委員会や経営層へのレポートにも活かされ、制度改善の起点になります。
おわりに|“体調を整えるのも仕事のうち”
過重労働の問題は、本人の「がんばり」だけでは解決できません。
職場や働き方そのものを見直す視点が、これからますます求められます。
そしてもう一つ大切なのが、「体調を整えるのも仕事のうち」という考え方。
働き続けるために、自分のコンディションを俯瞰して整えることも「戦略」なのです。
もちろん、疲れすぎた時は薬や休息に頼ることも必要です。
ただそれと同じくらい、日頃からの運動・睡眠・生活リズムの土台づくりも大切にしてほしいと思います。
もし体調に不安がある方は、産業医面談やメンタルクリニックでの相談、そして運動療法なども活用しながら、整えながら働くという選択肢を持ってみてください。
👉 詳しくは著書 『産業医が教える会社の休み方』(中公新書ラクレ) でも解説しています。
Stay Fit Clinicのサポート
当院では、医学 × 産業医 × 運動療法という3つの視点から、働く人の健康を支えています。
過重労働による不調の診断・治療
診断書・意見書の発行
適応障害・不眠症の治療
働きながら体調を整える方法の提案
CrossFit Aoyamaと連携した運動療法
復職支援・環境調整の相談
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