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GW明けに仕事に行きたくない方へ|五月病・適応障害の見分け方と受診目安

  • 執筆者の写真: stayfitclinic
    stayfitclinic
  • 4月30日
  • 読了時間: 10分

連休が明けて、また仕事が始まる。そう思うだけで胸が重い。


GW明けの月曜日、「行きたくない」と感じたことがある方は多いと思います。それ自体は自然な感情です。連休中にリラックスした分、再び仕事モードに切り替えるにはエネルギーが要ります。


ただし、その「行きたくない」が日に日に強くなっている、あるいは体にまで症状が出ているなら、それは単なる連休明けの憂うつではないかもしれません。


この記事では、GW明けのメンタル不調の正体と、「様子を見ていい場合」と「受診すべき場合」の見分け方について、産業医として15社以上の企業で働く方を診てきた経験をもとにお伝えします。


GW明けに仕事に行きたくない方へ
GW明けに仕事に行きたくない方へ

GW明けに不調が出やすいのには理由がある


4月に新しい環境に入った方は、新年度から約1か月間、慣れない環境で緊張しながら頑張り続けています。


その間、ストレス反応は体の中で確実に蓄積されています。厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、ストレスは心理的な反応(不安・抑うつ)だけでなく、身体的な反応(動悸、頭痛、胃腸障害、肩こり、不眠)としても現れると明記されています。


GWの連休で緊張の糸が切れると、それまで抑え込んでいた不調が一気に表面化します。


つまり、GW明けの不調は「GWで悪化した」のではなく、「4月からずっと蓄積していたものが顕在化した」ということが多いのです。



「一過性の憂うつ」と「受診が必要なサイン」の見分け方


GW明けの「行きたくない」にはグラデーションがあります。


数日で落ち着くケース(一過性)


・連休明けの初日〜2日目がピークで、徐々に慣れていく


・仕事を始めてしまえば、それなりに集中できる


・趣味や友人との時間は普通に楽しめる


・睡眠や食欲に大きな変化はない


→ この場合は、生活リズムを戻すことで自然に改善することが多いです。


受診を検討すべきケース


以下の症状が2週間以上続いている場合は、五月病の範囲を超えている可能性があります。


・朝起きた瞬間から強い憂うつ感があり、出勤が苦痛


・出社前に吐き気や腹痛が起きる


・夜眠れない、または途中で何度も目が覚める


・休日も気分が晴れず、何をしても楽しくない


・些細なことで涙が出る、感情が不安定になった


・仕事中に集中できず、ミスが明らかに増えた


・「もう辞めたい」「消えてしまいたい」という考えが浮かぶ


これらは、適応障害やうつ病の初期症状と重なります。「もう少し様子を見よう」と思った時点で、すでに受診のタイミングであることが少なくありません。


適応障害のより詳しいセルフチェックは「適応障害セルフチェック|仕事のストレスで「最近おかしいかも」と感じたら」にまとめています。


周囲が気づけるサイン──「KAPE」で見る行動の変化


本人が自分の不調に気づけないこともあります。そうしたとき、人事・管理職・同僚が外から見て気づけるサインとして、産業医の堤多可弘先生が提唱する 「KAPE」 という考え方があります。


KAPEは、産業医に相談すべき「事例性」を整理するためのフレームです。


K:勤怠 (Kintai)

A:安全 (Anzen)

P:パフォーマンス (Performance)

E:影響 (Eikyou)


ここでは、GW明けの不調に当てはめて整理します。


K:勤怠の変化


メンタル不調が進むと、まず勤怠に変化が出ることがあります。


・遅刻や早退が増える

・急な欠勤が増える

・週明けに休みがちになる

・有給やフレックスで何とか帳尻を合わせている

・出社直前になると体調不良を訴える


注意したいのは、勤怠の乱れが有給やフレックスで処理され、職場の中で見えにくくなることです。

本人が「迷惑をかけたくない」と思っているほど、限界まで表面化しないことがあります。


A:安全に働けているか

Aは、単なる「事故リスク」だけではありません。


今の心身の状態で、その人が安全に通勤し、安全に働き、安全に帰れるかを見る視点です。


・通勤中に動悸や過呼吸が出る

・電車に乗ると具合が悪くなる

・注意力や集中力が落ちて、事故や重大ミスにつながりそう

・運転業務、機械作業、高所作業など安全配慮が必要な業務についている

・「消えてしまいたい」「いなくなりたい」といった発言がある


特にAに関わるサインは、急を要します。

「もう少し様子を見よう」ではなく、産業医や医療機関につなぐ判断が必要です。


P:パフォーマンスの変化


以前と比べて、仕事の質やスピードが落ちている場合も重要なサインです。


・ミスが増える

・業務のペースが著しく落ちる

・集中していない様子が続く

・判断に時間がかかる・必要以上に残業が増える

・夜中や休日にメールを送るようになる


これは「能力が落ちた」のではなく、疲労やメンタル不調によって、集中力・注意力・思考力が一時的に落ちている可能性があります。


E:周囲への影響

Eはその人だけでなく、チーム全体に無理が広がっていないかを見る視点です。


・周囲がフォローし続けて疲弊している

・イライラして同僚や上司と衝突する

・報連相が極端に減る、または過剰になる

・会議での反応が乏しくなる

・職場全体が「どう声をかければいいか分からない」状態になる


メンタル不調は、本人だけの問題に見えて、実際には職場全体の運用に影響します。


だからこそ、本人を責めるのではなく、人と職場の両方を守るために、早めに産業医へ相談することが大切です。


KAPEは「責めるため」ではなく、早く気づくための視点


KAPEは、社員を評価したり、問題視したりするためのものではありません。


大切なのは、「いつもと違う」を早めに見つけ、本人と職場の双方を守ることです。


GW明けは、4月からの緊張や疲労が表面化しやすい時期です。


勤怠・安全・パフォーマンス・周囲への影響に変化が出ている場合は、本人だけで抱え込ませず、早めに相談につなげてください。


補足:薮野の考え方としては「外見の変化」も大切なサインです


ここまで紹介したKAPEは、堤先生が提唱されている産業保健の実務的なフレームです。


これに加えて、私自身が産業医として現場を見るときは、外見や表情の変化も重要なサインとして確認しています。


たとえば、次のような変化です。


・顔がこわばっている

・身だしなみが乱れている

・以前と表情が明らかに違う

・目が合いにくい

・声が小さくなった

・急に痩せた

・疲れた印象が強くなった


本人が「大丈夫です」と言っていても、外見や表情には不調のサインが出ていることがあります。


KAPEに加えて、こうした日常の小さな変化にも目を向けることで、GW明けのメンタル不調に早く気づける可能性があります。


GW明け仕事に「行きたくない」は甘えではない


産業医面談でよく聞くのが、「こんなことで休むのは甘えですか?」という言葉です。


答えは明確です。甘えではありません。


適応障害は、DSM-5やICD-11で正式に定義された精神疾患です。「心が弱い」から発症するものではなく、環境変化によるストレスが個人の適応力を超えたときに誰にでも起こりうるものです。


むしろ、真面目で責任感が強い人ほど、「まだ頑張れる」「周りに迷惑をかけたくない」と我慢を重ね、結果的に症状が重くなってから受診するケースが目立ちます。


厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、仕事に強い不安やストレスを感じている労働者の割合は82.7%です。ストレスを感じていること自体は、まったく異常ではありません。



回復には「段階に合った休み方」がある


「仕事に行きたくない」状態のとき、どう休めばいいのか。ここで知っておいてほしいのが、休み方にはレベルがあるということです。


パッシブレスト(消極的休息)


十分な睡眠、昼寝、ぼーっと過ごす。エネルギーの消費を最小限にする休み方です。不調が強い初期には、まずこれが最優先です。


アクティブレスト(積極的休息)


軽い散歩、ストレッチ、ぬるま湯での入浴。あえて体を動かすことで血流を促し、回復を早める休み方です。ある程度回復してきた段階で取り入れると効果的です。


レベル別の目安


回復段階 | パッシブ:アクティブ | 過ごし方


**初期(急性期)** | 9:1 | 無理せずゆっくり休む。必要最低限のことだけ


**中期(回復期)** | 7:3 | 散歩やストレッチを少しずつ取り入れる


**復帰準備期** | 5:5 | 心地よい疲れを感じる程度の運動ができる


初期に「早く復帰しなきゃ」と焦ってアクティブに動きすぎるのは逆効果です。また、回復期にパッシブのままでいると、今度は回復が停滞します。自分が今どの段階にいるのかを把握して、それに合った休み方を選ぶことが大切です。


拙著『産業医が教える会社の休み方』(中公新書ラクレ, 2024年)でもこの考え方を詳しく紹介しています。



放置すると何が起きるか


「五月病だからそのうち治る」と放置することには、リスクがあります。


適応障害を放置すると、症状が固定化・慢性化し、以下のような疾患に移行する可能性があります。


うつ病(大うつ病性障害)


不安障害


パニック障害


アルコール・物質依存


適応障害からうつ病への移行率は、研究によって10〜30%と報告されています(Casey P. "Adjustment disorders: the state of the art." World Psychiatry. 2011)。


逆に、適応障害の段階で適切に対処すれば、ストレス因の解消後6か月以内に回復するのが一般的です(DSM-5)。


早く気づいて、早く対処する。 これが適応障害において最も重要な原則です。


適応障害とうつ病の違いについて詳しくは「うつ病と適応障害の違いとは」で解説しています。



私自身の経験から


偉そうなことを書いていますが、私自身も、開業時の過労から適応障害を経験しています。


クリニックの開業とジムの立ち上げが重なり、休みなく走り続けた結果、ある日突然、何もする気力が湧かなくなりました。


そのとき最もつらかったのは、症状そのものよりも「何もできない自分」への罪悪感でした。「こんなことで休んでいていいのか」「ここで止まったら全部終わる」──。


今だから言えますが、あの時もっと早く休んでいれば、回復はもっと早かったと思います。


だから、この記事を読んでくださっている方に伝えたいのは、「行きたくない」と感じている自分を責めないでほしいということです。



Stay Fit Clinicでの診療について


「GW明けから調子が悪いけど、受診するほどなのか分からない」


そう思っている方にこそ、来ていただきたいと思っています。


受診することは、何かを決断しなければいけないということではありません。今の状態を専門家と一緒に整理する、それだけでも意味があります。


当院では、産業医として15社以上の企業で人事・労務と連携してきた経験を活かし、職場の事情を踏まえた診療を行っています。


・今の不調が「一過性」なのか「適応障害」なのかを丁寧に評価する


・必要に応じて、環境調整の診断書や休職の診断書を作成できる


・会社の制度を知っている主治医だからこそ、会社との交渉方法もアドバイスできる


・回復後は、併設のCrossFit Aoyama(厚労省認定・指定運動療法施設)と連携した運動療法プログラムも利用可能


「なんとなくつらい」が続いているなら、早めにご相談ください。




Stay Fit Clinic 院長

心療内科医・産業医

薮野淳也



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