会社に休職を切り出す前にやること|産業医・心療内科医が解説
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更新日:3 時間前
こんにちは。働く人のパートナードクターの薮野淳也です。
つい先日も、産業医面談でこんな相談を受けました。
「もう、上司にどう伝えればいいか分からなくて」
「休職したいけど、切り出し方が分からなくて、毎朝出社しています」
私が産業医を担当している15社で、休職を検討している方のうち、半数近くは同じ悩みを抱えています。
そして、こういう相談を受けたとき、私はまずこう答えます。
「上司に伝える前に、やっておきたい準備があります」
今日はこの話を書きます。

「いきなり切り出す」は、逆効果になりやすい
ここまで読んで、こんな疑問を持つ方もいるかもしれません。
「準備って何?早く休んだ方がいいんじゃないの?」
その通りで、休職が必要な方は、できるだけ早く休む方がいい。これは医学的にも明らかです。
ただ、私が現場で見てきた限り、準備なしに上司に切り出すと、話が空回りすることが多いのです。
なぜか。理由は3つあります。
1. 上司は、医療判断ができない
「ちょっと体調が悪くて」「最近眠れなくて」と伝えても、上司は医師ではありません。
「もう少し頑張れる?」
「気分転換に有給とったら?」
「みんな多少はしんどいよ」
悪気がなくても、こういう返答が出てきがちです。
そして、本人は「やっぱり甘えなのかも」と思って、また我慢を続けてしまう。
2. 人事は、診断書がないと制度を動かせない
仮に上司から人事に話が回っても、人事は診断書がないと休職制度を発動できません。
「主治医の判断を持ってきてください」となり、結局そこから医療機関を探すことになる。
症状が悪化しているのに、何週間も「待ち」の状態が続いてしまう。
3. 「気合」「甘え」のフレームに引きずられる
医療的な根拠がないまま話が進むと、本人にも周囲にも「気合の問題」というフレームが残ります。
このフレームは、その後の復職にも悪影響を残します。
「あの時、もっと頑張れたのに休んだ」という記憶になってしまうからです。
休職を切り出す前にやっておく、3つの準備
逆に、3つの準備をしてから話せば、上司・人事は対応しやすくなります。
準備 1. 自分の状態を「事実」で整理する
「しんどい」「つらい」は主観です。
これを上司に伝えても、相手は判断軸を持てません。
代わりに、観察可能な「事実」で整理します。
たとえば:
・直近2週間で、朝起きられなかった日が何日あるか
・食事の量や回数が、いつもと比べてどう変わっているか
・睡眠時間と、その質
・業務でのミス、対応漏れ、判断の遅れの頻度
・休日も気分が落ち込むかどうか
これは、医療側にとっても診断の材料になります。
DSM-5(精神医学の診断基準)では、こうした観察事実の持続が、適応障害やうつ病性障害の診断ポイントとされています。
「気合の問題ではないこと」を、自分の中でも整理する作業です。
準備 2. 医療機関を先に決めて、まず受診する
実は、上司に話す前に最も大事なのが、これです。
診断書を持って話せば、上司も人事も「医療マター」として動けます。
診断書がない状態で話を切り出すと、ほぼ確実に「主治医の判断を」と差し戻されます。
「診断書をもらえるか不安」と思う方もいますが、心療内科の初診は、診断書ありきで進めることはほとんどありません。
まずは現在の状態を医師と共有する場、と捉えていただいて大丈夫です。
ちなみに、産業医面談を会社に申し込んでから受診する方法もあります。
労働安全衛生法では、労働者が産業医に相談する権利が認められています。
ただ、産業医は会社との契約で動く立場なので、純粋に本人の味方として動く主治医を先に持っておく方が、選択肢は広がります。
準備 3. 会社の就業規則を確認する
意外と見落とされがちですが、これも重要です。
確認すべきポイント:
・休職制度があるか(小さい会社だと制度自体がないこともある)
・休職可能期間(3ヶ月、6ヶ月、1年など会社によって違う)
・休職中の給与(無給が一般的、会社によっては一部支給)
・傷病手当金の申請窓口(健康保険組合)
・復職時の手続き(産業医面談の要否、リハビリ出勤など)
これを把握した上で医療機関に行くと、医師との相談もスムーズになります。
「2ヶ月の診断書が現実的か、3ヶ月が必要か」を、制度の制約を踏まえて議論できるからです。
3つの準備ができていれば、伝え方はシンプル
ここまでの3つが整っていれば、上司への伝え方は驚くほどシンプルになります。
たとえば、こう言うだけで十分です。
「主治医から、休職を勧められています。診断書をお持ちしたので、人事の方とも相談させてください」
この一文で、話のフレームが一気に「医療マター」になります。
上司は「気合」「甘え」のフレームに引きずられず、人事への取り次ぎという役割に専念できる。
逆に、準備ができていない状態で「最近しんどくて休みたい」と切り出すと、話が広がってしまい、結論が出るまでに何週間もかかることがあります。
産業医として、私が伝えたいこと
「切り出すことが目的じゃない」というのが、私のスタンスです。
切り出し方を工夫するのは、その後の治療と回復をスムーズに進めるため。
切り出しに労力を使って体調を悪化させるのは、本末転倒です。
社会全体で、メンタル不調による休職は珍しいことではなくなってきています。
「自分だけが」と抱え込まないでください。
まとめ
会社に休職を切り出す前に、3つの準備をしておくと、その後の流れが大きく変わります。
・自分の状態を「事実」で整理する
・医療機関を先に決めて、まず受診する
・会社の就業規則を確認する
このうち、最も大事なのは2つ目。診断書を持っているかどうかで、話の進み方がまったく違います。
「もう限界かも」と思った時点で、まずは医師に会いに行ってください。
そこから、上司・人事との話を一緒に整理することができます。
一人で抱え込まなくていい話だと、私は思っています。
ここまで読んでくださった方へ
「もう限界かもしれない」
「上司にどう切り出せばいいか、まだ分からない」
そう感じている方を、Stay Fit Clinicでは毎日のように見ています。
港区南青山・外苑前駅近く、働く人のための内科・心療内科。
産業医として15社以上を担当している院長が、休職の伝え方から復職までを一貫してサポートします。
医師判断で、初診当日の診断書発行にも対応しています。
「切り出す前の整理だけでも相談したい」という段階で構いません。
迷っている方こそ、まずはお越しください。




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