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休職ではなく「勤務配慮」を相談したいとき、心療内科でできること|働きながら整える、という選択

  • 執筆者の写真: stayfitclinic
    stayfitclinic
  • 2 日前
  • 読了時間: 8分

「休むほどではない。でも、このまま全力で続けるのは、正直きつい」


「休職したら、戻れなくなりそうで怖い」


「できれば、働きながら治していきたい」


診察室で、こうした声を本当によく聞きます。


体調を崩したとき、多くの方が「休職するか、我慢して続けるか」の二択で考えてしまいます。でも実は、その間に、もうひとつの選択肢があります。それが「勤務配慮(働き方の調整)」です。


私は産業医・心療内科医として、休職の診断書も書きますが、それと同じくらい、「休まずに、働き方を調整して立て直す」お手伝いもしています。実は私自身も、適応障害を経験しながら、休まずに働き方を整えて乗り越えた一人です。


この記事では、休職ではなく勤務配慮を相談したいとき、心療内科(主治医)に何ができるのかを、産業保健の視点から解説します。


休職ではなく「勤務配慮」を相談したいとき、心療内科でできること|働きながら整える、という選択
休職ではなく「勤務配慮」を相談したいとき、心療内科でできること|働きながら整える、という選択

「休職か、我慢か」だけではない──第三の選択肢


体調を崩したとき、「休職」と「我慢して続ける」を両極に置いて考えると、多くの人が動けなくなります。


休職はハードルが高く感じる。かといって、このまま我慢を続ければ、いずれ本当に動けなくなる。その板挟みのなかで、無理を重ねてしまう方を、私は何人も見てきました。


ですが、現実にはその中間に幅があります。働き方を一時的に調整して、負荷を下げながら治していく。これが「勤務配慮」です。


そして、早い段階で勤務配慮を入れられれば、結果的に休職そのものを避けられるケースも少なくありません。「もっと早く相談してくれれば」と感じる場面は、産業医面談でも本当に多いのです。


働きながら整える「勤務配慮」とは?──具体的にできること


勤務配慮とは、体調に合わせて働き方を一時的に調整することです。たとえば、次のようなものがあります。


・残業・深夜業の制限(まずは定時で帰れる状態をつくる)


・業務量や業務内容の軽減(一時的に、負荷の重い業務や責任から離れる)


・勤務時間の短縮、時差出勤


・在宅勤務や出社頻度の調整


・配置・担当業務の見直しの相談


・一定期間ごとの面談で、経過を確認する


ポイントは、これらは「ずっと」ではなく、回復に合わせて段階的に元に戻していく前提だということです。配慮は、甘えでも特別扱いでもなく、回復を早めて長く働き続けるための、合理的な手段です。


なお、「つらいから異動したい」というご相談もよくありますが、異動そのものが解決になるとは限りません。何がつらさの原因かを整理しないまま環境だけ変えても、同じことが繰り返されることがあるためです。だからこそ、配慮の中身を一緒に設計することが大切になります。


心療内科(主治医)にできること──「配慮」を書面で言語化する


勤務配慮を実現するうえで、心療内科の主治医が果たせる役割は大きく、具体的です。


① 診断書に「配慮事項」を書く


診断書は「休職」のためだけのものではありません。「就業は可能。ただし、当面は残業を避け、業務軽減が望ましい」といった形で、働きながら必要な配慮を書面で示すことができます。


口頭で上司や人事に何度も体調を説明するのは、それ自体が大きな負担です。書面があれば、その説明を主治医が肩代わりできます。


② 「療養・就労両立支援」という仕組みを使う


治療と仕事を両立させるための、「療養・就労両立支援」という仕組みがあります。主治医が、治療の状況や望ましい配慮を職場に向けて書面で伝え、働き方の調整につなげるものです。


もともとはがんや難病などが中心でしたが、近年の制度改定で対象が広がり、うつ病や適応障害といったメンタル不調でも使えるようになりました。働きながら治したい方にとって、心強い後押しになります。


③ 産業保健に詳しい主治医だからできること


一般的な心療内科では、症状の治療が中心になります。一方、産業医の経験がある医師であれば、「この負荷で働き続けるとどうなるか」「会社にどう配慮を求めれば現実的に動いてもらえるか」まで踏まえた、職場で実際に通る配慮を書くことができます。


主治医・産業医・会社の連携で、配慮は実現する


勤務配慮を最終的に決めるのは、会社です。会社には、従業員の心身の安全に配慮する義務(安全配慮義務/労働契約法第5条)があり、その一環として配慮を講じます。


その判断材料になるのが、主治医の意見と、産業医の意見です。


主治医が見ているのは「症状が治っているか」。産業医が見ているのは「その仕事に、その負荷で戻って大丈夫か」。立っている場所が違う二つの視点がそろうことで、はじめて安全で現実的な配慮になります


本人がひとりで会社と交渉する必要はありません。主治医が書面で土台をつくり、産業医が就業上の意見として会社に橋渡しする。この流れがあるだけで、抱える負担はずいぶん軽くなります。


私自身も、「休まず、整えながら」働きました


少し私自身の話をさせてください。


私はクリニックを開業した年、その忙しさから適応障害になりました。医師で、産業医で、運動も続けていて、健康には人一倍気を使っていたつもりでした。それでも、体重は10キロ落ちました。


そのとき私が選んだのは、完全に休むことではなく、働き方と生活を立て直しながら、走り続ける道でした。負荷を見直し、回復のための時間を意識的に確保する。気合いで耐えるのではなく、頑張り方そのものを設計し直したのです。


拙著『産業医が教える 会社の休み方』でも書きましたが、「休む」ことと「働き方を変える」ことは、対立せず、地続きです。大切なのは、自分にかかっている負荷を、どう設計し直すか。


だからこそ、「働きながら整えたい」というご相談に、私は実感を持って向き合えます。


ただし「我慢して続ける」とは違います


ひとつ、大切なことをお伝えします。


勤務配慮を求めることは、「我慢して続ける」こととは、まったく違います。配慮を申し出るのは、わがままでも、権利の濫用でもありません。むしろ、早めに相談するほど、軽い調整で立て直せるものです。


一方で、配慮では追いつかないほどつらい状態であれば、しっかり休むという選択も必要です。そして、休職が必要かどうかを判断するのは、ご本人ひとりではなく、主治医・産業医・会社です。無理に「働きながら」にこだわる必要はありません。


「働きながら整える」と「しっかり休んで整える」。この二つは対立しません。あなたの状態に合うほうを、一緒に選んでいきましょう。


最後に──配慮は「会社と相談しながら」決まる


ここまで「勤務配慮」についてお伝えしてきましたが、最後に、いちばん大切なことをお伝えします。


それは、希望した配慮が、すべてそのまま通るわけではないということです。


会社には、就業規則・人員体制・業務上の制約など、会社ごとのルールと事情があります。主治医や産業医が「この配慮が望ましい」と示しても、それを実際にどう実現するかは、最終的に会社との相談で決まります。たとえば、在宅勤務の制度がそもそもない会社もありますし、業務の性質上、時短や担当替えが難しい職種もあります。


だからこそ大切なのは、「一方的に要求すること」でも「黙って我慢すること」でもなく、会社と相談しながら、現実的な落とし所を見つけていくことです。


おすすめは、産業医面談を「会社のルールや事情を把握する場」として使うこと。そのうえで自分の希望を伝え、医学的な必要性と会社の事情をすり合わせていきます。主治医が書く診断書や意見書は、その対話を支える土台になります。


「配慮してもらう」のではなく、「会社と一緒に、働き続けられる形を探す」。この姿勢が、結果的に、無理なく長く働くための一番の近道になります。


まとめ


・体調を崩したときの選択肢は「休職か我慢か」だけではなく、その中間に「勤務配慮(働き方の調整)」がある


・勤務配慮には、残業制限・業務軽減・時短・在宅調整などがあり、回復に合わせて段階的に戻すのが前提


・心療内科の主治医は、診断書に配慮事項を書き、「療養・就労両立支援」で職場に橋渡しできる(うつ・適応障害も対象)


・配慮を決めるのは会社(安全配慮義務)。主治医と産業医の視点がそろうことで、安全で現実的な配慮になる


・配慮を求めるのは甘えではない。早めの相談が肝心。ただし、休む必要があるときは休む判断も大切


・希望した配慮がすべて通るとは限らない。会社にはルールと事情があるため、会社と相談しながら落とし所を見つけることが何より大切


ここまで読んで、こんな思いはありませんか?


「自分の場合、どんな配慮をお願いできるんだろう」


「働きながら治す相談を、どこで始めればいいんだろう」


Stay Fit Clinicは、港区南青山・外苑前駅近くにある、働く人のための内科・心療内科です。産業医として15社以上を担当している院長が、診断書での配慮の言語化から、職場との両立支援、必要なときの休職判断までを一貫してサポートします。


「行くか迷っている段階」での相談でも構いません。


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Stay Fit Clinic 院長 薮野淳也


心療内科医・産業医・社会医学系専門医


著書『産業医が教える 会社の休み方』(中公新書ラクレ、2024年)


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