休職から復職へ|職場復帰までの流れと準備のポイントを産業医が解説
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- 4 時間前
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「そろそろ復職を考えたいけれど、何から準備すればいいのか分からない」
休職中の方から、こうしたご相談をよくいただきます。
復職は「元の生活に戻ること」ではありません。休職期間に回復した心身の状態を維持しながら、仕事という負荷を少しずつ再開していくプロセスです。焦って復帰すれば再休職のリスクが高まり、慎重すぎれば社会復帰のタイミングを逃してしまう。このバランスが、復職の難しさでもあります。
この記事では、厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」に沿った復職の流れと、産業医・心療内科医として私が現場で大切だと感じている準備のポイントを解説します。

復職がうまくいかないケースは珍しくない
まず知っておいていただきたいのは、復職後に再び休職する方は決して少なくないということです。
厚生労働省研究班の調査によると、メンタルヘルス不調で休職した方の復職後1年以内の再休職率は約28〜30%、5年以内では約47〜50%に達するとされています(厚生労働省「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」2017年)。
しかも、2回目の休職は1回目より長期化する傾向があります。1回目の平均休職期間が約107日であるのに対し、2回目は約157日と、約1.5倍に延びるというデータもあります。
だからこそ、復職は「準備」で決まると言っても過言ではありません。
厚生労働省が示す職場復帰の5ステップ
厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」の中で、復職支援を5つのステップに分けています(平成16年策定、平成24年改訂)。
第1ステップ:病気休業開始及び休業中のケア
休職が始まった段階です。ここでは安心して休むことが最優先です。
『産業医が教える会社の休み方』でも触れていますが、休職直後は「自分は社会から取り残されてしまうのではないか」という不安が非常に強くなります。しかし、この段階で無理に活動しようとすると、回復が遅れてしまいます。
まずは生活リズムの安定を目指してください。朝決まった時間に起きて、夜決まった時間に寝る。それだけで十分です。
第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
症状が安定してきたら、主治医から「復職可能」の診断書が出されます。
ただし、ここで注意が必要です。主治医の「復職可能」は、あくまで日常生活レベルでの回復を意味していることが多く、「すぐにフルタイムで働ける状態」とは限りません。主治医は職場の環境や業務内容を詳しく把握していないため、この点はどうしても限界があります。
そのギャップを埋めるのが、次のステップです。
第3ステップ:職場復帰の可否の判断及び職場復帰支援プランの作成
ここが復職プロセスの最も重要な局面です。産業医面談が行われ、会社側と本人、そして産業医で「復職支援プラン」を作成します。
具体的には以下のような内容を取り決めます。
・復職日
・就業上の配慮(短時間勤務・残業制限・業務内容の調整など)
・フォローアップの頻度とスケジュール
・主治医との情報共有の範囲
産業医は「この人が、この職場で、この業務を、安全にできるか」を総合的に判断します。主治医の診断書だけでは分からない、職場側の受け入れ態勢まで含めて考えるのが産業医の役割です。
第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
会社(人事・上司)が最終的に復職を決定し、本人に通知します。この時点で、配慮事項や段階的な業務復帰のスケジュールが確定します。
第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
復職してからが本番です。定期的な産業医面談や上司との1on1を通じて、業務負荷と体調のバランスを確認していきます。
復職後最初の2年間が、再発リスクが最も高い時期です。「もう大丈夫」と思って通院や服薬を自己判断で中断してしまうケースが少なくありませんが、これが再休職の引き金になることがあります。
復職前に整えておきたい3つの準備
制度上の流れは上記の通りですが、実際に復職がうまくいくかどうかは、休職中の過ごし方にかかっています。
1. 生活リズムの回復
復職に向けて最も基本的な準備は、出勤を想定した生活リズムを取り戻すことです。
具体的には、復職の1〜2か月前から以下を意識してみてください。
・朝7時前後に起床し、午前中に外出する
・日中は図書館やカフェなど、自宅以外の場所で過ごす時間を作る
・通勤と同じ時間帯に電車に乗ってみる(通勤練習)
これらは「リハビリ出勤」と呼ばれることもあります。いきなりフルタイムの出勤ではなく、段階的に活動量を上げていくことが大切です。
2. 体力の回復
休職中は活動量が減るため、想像以上に体力が落ちています。復職後に「頭は働くのに、体がついていかない」という声はよく聞きます。
2024年にBMJに掲載されたネットワークメタアナリシス(Noetel et al., 218のランダム化比較試験、14,170名対象)では、ウォーキング、ジョギング、筋力トレーニングなどの運動が、抑うつ症状の軽減に認知行動療法に匹敵するレベルで有効であることが示されています。
大切なのは「何をやるか」よりも「続けられるかどうか」です。ウォーキングでも、ヨガでも、軽い筋トレでも構いません。まずは週2〜3回、20〜30分の運動を習慣にすることから始めてみてください。
3. 休職の振り返り
復職前に一度立ち止まって、「なぜ休職に至ったのか」を振り返ることも重要です。
これは自分を責めるためではなく、同じパターンを繰り返さないためです。
・業務量が限界を超えていたのか
・人間関係のストレスが主因だったのか
・そもそも職種や環境が合っていなかったのか
この振り返りは、主治医やカウンセラーと一緒に行うのが理想です。一人で考えると、どうしても自責的になりがちだからです。
リワークプログラムという選択肢
復職の準備を一人で進めることが難しい場合、リワークプログラムの活用も検討に値します。
リワークプログラムとは、医療機関やリハビリ施設で行われる復職支援のためのプログラムです。生活リズムの立て直し、認知行動療法、グループワーク、軽い運動などを組み合わせて、段階的に復職への準備を進めます。
日本うつ病リワーク協会の大規模調査(85施設、5,014名対象)によると、リワークプログラム利用者の復職1年後の就労継続率は83.2%でした。一方、リワークを利用しなかった場合のハザード比は2.343(95%CI: 1.456-3.772)と、再休職リスクが有意に高いことが示されています。
すべての方にリワークが必要なわけではありませんが、「一人では復職の準備が進まない」「前回も復職後すぐに再休職した」という方には、選択肢として知っておいていただきたい制度です。
復職に「運動」を組み込む意味
復職の準備として、当院では運動を取り入れることをお勧めしています。
ここでいう運動は、ハードなトレーニングではありません。体を動かすことで得られる効果は、体力回復だけにとどまらないからです。
・生活リズムの定着 — 朝決まった時間にジムや公園に行く習慣ができると、起床時間が安定する
・自己効力感の回復 — 「今日はこれだけ動けた」という小さな達成感が、自信の回復につながる
・睡眠の質の改善 — 適度な運動は入眠を助け、中途覚醒を減らす
・認知機能の改善 — 集中力・判断力の回復は、デスクワーク復帰にとって不可欠
当院では、院長自身が産業医であり、併設するCrossFit Aoyama(厚生労働省認定・指定運動療法施設)と連携しています。医師の判断のもと、運動療法処方箋を発行し、一人ひとりの回復段階に合わせた運動プログラムを提案することが可能です。
もちろん、いきなりCrossFitをやる必要はありません。まずは散歩から始めて、少しずつ強度を上げていく。そのプロセスを医師がサポートします。
当院での復職支援の流れ
Stay Fit Clinicでは、以下のような流れで復職をサポートしています。
1. 定期的な診察で回復状態を確認
症状の推移だけでなく、生活リズム・活動量・睡眠の質などを総合的に評価します。
2. 復職のタイミングを主治医として判断
「復職可能」の診断書を出す際には、患者さんと十分に話し合い、無理のないタイミングを見極めます。
3. 産業医との連携(必要に応じて)
院長が産業医としての経験を持つため、企業側がどのような情報を必要としているか、復職支援プランにどう反映すべきかを踏まえたアドバイスが可能です。
4. 運動療法の併用
必要に応じて運動療法処方箋を発行し、CrossFit Aoyamaでの段階的な運動リハビリを提案します。
5. 復職後のフォローアップ
復職後も定期的な通院を継続し、再発の兆候がないかモニタリングします。業務負荷が増えてきた段階での早期介入を重視しています。
まとめ
復職は「体調が戻ったから行く」という単純なものではありません。生活リズム、体力、心の準備、そして職場との調整。これらを段階的に整えていくプロセスです。
大切なのは、一人で抱え込まないこと。主治医、産業医、人事、そして家族。頼れる人を巻き込みながら進めていくことが、復職を成功させる最大のポイントです。
復職後最初の2年間が最もリスクの高い時期です。通院を続けること、無理をしないこと、異変を感じたら早めに相談すること。この3つを忘れないでください。
初診のご案内
「復職に向けて何を準備すればいいか分からない」「前回の復職がうまくいかなかった」
そんな方は、早めに一度ご相談ください。産業医経験豊富な院長が、復職までの道筋を一緒に考えます。
Stay Fit Clinic 院長
心療内科医・産業医
薮野淳也
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