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試用期間中に休職はできる?|入社直後のメンタル不調に産業医が答える

  • 執筆者の写真: stayfitclinic
    stayfitclinic
  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

「入社してまだ3か月なのに、もう会社に行くのがつらい」

「試用期間中に休職なんてできるのだろうか」


4月・5月になると、こうしたご相談が増えます。


転職や新卒入社で新しい環境に飛び込んだものの、思っていた仕事内容と違った、人間関係がうまくいかない、社風が合わない。入社直後は期待と緊張が入り混じる時期だからこそ、ギャップによるストレスは想像以上に大きなものになります。


「まだ試用期間だから」「入ったばかりで休むなんて」と我慢し続けた結果、症状が深刻化してから受診される方を、産業医として何度も見てきました。


この記事では、試用期間中の休職に関する法的な整理から、傷病手当金の受給要件、会社への伝え方まで、産業医として15社以上の企業を見てきた経験をもとに解説します。


試用期間中に休職はできる?|入社直後のメンタル不調に産業医が答える
試用期間中に休職はできる?|入社直後のメンタル不調に産業医が答える


試用期間中でも休職はできる


結論から言えば、試用期間中であっても休職は可能です。


労働基準法や労働契約法において、「試用期間中の労働者は休職できない」という規定はありません。試用期間はあくまで「本採用するかどうかを判断するための期間」であり、労働者としての権利(有給休暇を除く多くの権利)は正社員と同様に認められています。


ただし、実務上はいくつかの注意点があります。


就業規則の確認が必要


多くの企業では、休職制度を就業規則で定めています。そしてその中に「勤続○か月以上の者に適用する」という条件が設けられていることがあります。


たとえば「勤続6か月未満の者は休職制度の対象外」と規定されている場合、試用期間中の社員は制度上の「休職」を利用できない可能性があります。


ただし、これは休職制度が使えないということであって、休めないということではありません。医師の診断書をもとに、会社と相談して休養を取ることは十分に可能です。


産業医として企業の人事と関わる中で、勤続期間に関わらず医師の診断書があれば柔軟に対応するケースを数多く見てきました。


試用期間の延長・満了との関係


気になるのは「試用期間中に休職したら、そのまま辞めさせられるのではないか」という点だと思います。


法的には、試用期間中であっても正当な理由なく解雇することはできません(労働契約法第16条)。


メンタルヘルス不調で休養が必要になったこと自体は、正当な解雇理由にはなりません。


一方で、試用期間の延長や、本採用の見送りについては、就業規則の規定や個別の事情によって判断が分かれるため、一概には言えません。


ここは会社ごとの対応が異なる部分であり、産業医として企業側の判断基準を見てきた経験から言えるのは、医師の診断書を提出し、正式に休養の必要性を伝えている方のほうが、会社側も対応しやすいということです。


自己判断で欠勤を続けてしまうと、無断欠勤として扱われるリスクがあります。つらい状況であっても、診断書を通じて正式なルートで会社と共有することが大切です。


傷病手当金は入社直後でも受給できる


「入社したばかりで傷病手当金はもらえるのか?」というご質問もよくいただきます。


答えは、健康保険に加入していれば、入社初日からでも受給要件を満たし得ます


傷病手当金の受給要件は以下の4つです(健康保険法第99条)。


1. 業務外の病気やケガであること


2. 療養のために労務に服することができないこと


3. 連続3日間の待期期間を経ていること(有給・公休・欠勤いずれでも可)


4. 待期期間後も引き続き4日目以降に仕事を休んでいること


ポイントは、「勤続○か月以上」のような期間要件がないことです。入社して1週間でも、上記の要件を満たせば傷病手当金の申請は可能です。


支給額の目安


傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の2/3です。


たとえば月給25万円(標準報酬月額26万円)の場合、日額は約5,780円、月額に換算すると約17万円程度になります。最大1年6か月間支給されます。


手続きの詳細については「傷病手当とは?申請方法から支給までの手順を解説」で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。



「辞める」前に「休む」を選択肢に入れてほしい


産業医として面談をしていて強く感じるのは、入社直後に不調を感じた方の多くが、「辞めるか、我慢するか」の二択で考えているということです。


しかし、その間に「休む」という選択肢があります。


厚生労働省「令和5年 若年者雇用実態調査」によると、入社後3か月未満で離職した方の理由として最も多いのは「人間関係」(52.3%)でした。「仕事が自分に合わない」「労働条件の問題」が続きます。


人間関係や環境のミスマッチは、確かにつらいものです。しかし、メンタルが追い詰められた状態で下す判断は、必ずしも最善ではありません。休養を取り、気持ちと体調を少し立て直してから、辞めるかどうかを考えても遅くはないのです。


実際、休職して回復した後に「あのとき辞めなくてよかった」と話す方もいれば、「回復して冷静に考えた結果、転職を決めた」という方もいます。どちらの選択も、心身が回復した状態で下した判断であれば、後悔は少ないと、外来で感じています。



入社直後のメンタル不調は珍しくない


「入ったばかりで不調になるなんて自分は弱いのではないか」。そう感じている方は少なくありません。


しかし、データはそれが「個人の弱さ」ではないことを示しています。


・大卒3年以内の離職率は34.9%(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」令和3年卒)


・20代の精神障害労災認定は243件で前年比+18%(厚生労働省「過労死等の労災補償状況」令和6年)


・20代女性の約4〜5人に1人がメンタルヘルス不調を経験(パーソル総研, 2024年)


・職場への相談に68%が抵抗感を持っている(同上)


入社直後に不調になることは、決して珍しいことではありません。むしろ、相談できずに一人で抱え込むことのほうが、回復を遅らせるリスクがあります。



会社への伝え方


試用期間中に体調不良で休みたいと伝えるのは、心理的にハードルが高いものです。「まだ戦力にもなっていないのに」「評価に響くのでは」という不安は自然な気持ちです。


ただ、産業医として企業の人事と関わってきた経験から言えることがあります。


会社にとって最も困るのは、何も言わずに突然来なくなることです。


体調不良の報告があり、医師の診断書が提出されていれば、会社側も対応の仕方があります。逆に、無断欠勤が続くと「連絡が取れない社員」として処理されてしまい、不利な状況に追い込まれかねません。


伝え方の一例


直属の上司、または人事担当者に、以下のように伝えれば十分です。


「体調不良が続いており、医療機関を受診したところ、しばらく休養が必要との診断を受けました。診断書をお渡ししたいのですが、どなたにお送りすればよいでしょうか。」


電話でもメールでも構いません。「休職させてください」と言う必要はなく、「医師から休養が必要と言われた」という事実を伝えるだけで大丈夫です。




「環境調整の診断書」という選択肢もある


休職だけが解決策ではありません。


たとえば「業務量を調整してほしい」「しばらく残業を免除してほしい」「配置転換を検討してほしい」といった環境調整の配慮を求める診断書を出すことも可能です。


試用期間中であれば、まだ業務が固まりきっていないケースも多く、企業側も柔軟に対応できる余地があります。フルに休むほどではないが、このままでは限界が来る。そんなときに、環境調整の診断書は有効な一手になります。


適応障害の環境調整について詳しくは「適応障害には環境調整・配慮の診断書も有効?」をご覧ください。



産業医経験のある心療内科で相談するメリット


試用期間中の不調は、医療の問題であると同時に、職場環境の問題でもあります。


「診断書を出してもらえるか」だけでなく、「その診断書をもとに会社がどう動くか」「人事がどう判断するか」まで見通せる医師がいれば、安心感が違います。


当院の院長は、産業医として15社以上の企業で人事・労務と連携してきました。企業がどのような基準で試用期間の社員に対応しているかを、現場の経験として知っています。


・診断書の書き方ひとつで、会社側の受け取り方は大きく変わる


・「休職」以外の選択肢(環境調整、業務変更の意見書)を提案できる


・復職後のフォローアップまで、一貫してサポートできる


「入社したばかりだけど、もう限界かもしれない」。そう感じているなら、まずは状況を整理するところから始めましょう。受診すること自体は、何かを決めなければいけないということではありません。



初診のご案内


「試用期間中だけど休んでいいのか分からない」「辞めるべきか休むべきか判断がつかない」


そうした不安を抱えている方は、早めにご相談ください。産業医として企業の人事対応を知る心療内科医が、あなたの状況を一緒に整理します。




Stay Fit Clinic 院長

心療内科医・産業医

薮野淳也


 
 
 

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