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眠れない夜が続くとき、どうすればいい?|睡眠薬に頼る前に試すこと・受診の目安を心療内科医が解説

  • 執筆者の写真: stayfitclinic
    stayfitclinic
  • 1 日前
  • 読了時間: 8分

「布団に入っても頭が冴えて、なかなか寝つけない」


「夜中に何度も目が覚めて、そのあと眠れない」


「眠れないのがつらくて、夜が来るのが怖い」


診察室で、本当によく聞く言葉です。


私は産業医・心療内科医として働く方を毎日診ていますが、「眠れない」という相談は、年々増えていると感じます。仕事のストレス、寝る前のスマホ、不規則な生活。眠りを邪魔するものが、今の働く人にはあまりに多いんですよね。


最初に、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。


眠れない夜には、薬の前に見直せることがある。そして「眠れない」が続くときは、その裏にあるものに気づくサインでもある、ということです。


実際、私が外来でまずお話しするのも、薬ではなく「生活のほう」です。眠りを支える生活習慣(睡眠衛生)を整えることが、最初の一歩。睡眠薬は決して「最後の手段」でも「悪いもの」でもありませんが、その前にできることと、受診の目安を知っておくと、気持ちがずいぶん楽になります。今日はそのお話をします。


眠れない夜が続くとき、どうすればいい?|睡眠薬に頼る前に試すこと・受診の目安を心療内科医が解説
眠れない夜が続くとき、どうすればいい?|睡眠薬に頼る前に試すこと・受診の目安を心療内科医が解説

まず知ってほしい──「眠れない」にもタイプがあります


ひとことで「眠れない」と言っても、実はいくつかタイプがあります。


入眠困難:布団に入っても、なかなか寝つけない


中途覚醒:夜中に何度も目が覚める


早朝覚醒:思ったより早く目が覚めて、もう眠れない


熟眠障害:時間は寝ているのに、ぐっすり眠れた感じ(睡眠休養感)がない


睡眠は、「時間(量)」と「ぐっすり感(質)」の両方がそろって、はじめて“よく眠れた”になります。どちらか片方では足りないんですね。


とくに、早朝に目が覚めてしまう、寝た気がしない、というのが続くときは、背景にうつが隠れていることもあります。だから「ただの寝不足」と片づけてしまわないでほしいんです。


眠れない夜、薬の前に見直したいこと


睡眠薬を考える前に、生活のなかで見直せることがあります。どれも地味な話ですが、不眠の専門的な治療(あとで触れる認知行動療法)でも土台になっている、ちゃんと根拠のある方法ばかりです。


夜の眠りは、朝から始まっています


意外かもしれませんが、夜ぐっすり眠れるかどうかは、朝の過ごし方でだいぶ決まります。朝に光を浴びると体内時計が整って、夜に自然な眠気が来やすくなる。日中もしっかり光を浴びて、体を動かしておくと効きます。


運動というと身構えてしまいますが、ジムでがっつりやる必要はありません。通勤で歩く、家事で動く。そのくらいの「日中によく動く」だけで、寝つきが良くなって、夜中にも目が覚めにくくなります。ただ、寝る直前(1時間以内)に激しく動くのは逆効果なので、そこだけ気をつけてください。


夜は、「眠りを邪魔するもの」を減らす


カフェイン:効果が半分になるまで、平均で5時間ほどかかります。午前中の一杯でも夜まで残ることがあるので、「飲む時間」と「量」の両方に気を配ってほしいところ。夕方以降は控えめに。


お酒(寝酒):これがいちばん誤解されています。お酒は確かに寝つきを良くしますが、分解されてできるアセトアルデヒドが交感神経を刺激して、夜中や明け方に目を覚まさせてしまう。しかも毎晩続けると、「飲まないと眠れない、でも飲んでも眠れない」という悪循環に入っていきます。眠るためのお酒は、私はおすすめしません。


タバコ(ニコチン):覚醒作用があるので、寝つきを悪くして、夜中に目を覚ましやすくします。


寝る前のスマホ:できれば寝室に持ち込まず、電源を切って別の部屋に。寝そべって見ると画面が近くなって、余計に眠りを妨げます。


昼寝は「短く」


日中に長く昼寝をすると、夜の眠りが浅くなって、不眠が悪化します。昼寝は、夜の睡眠の代わりにはならないんですね。どうしても眠いときは、30分以内に。それ以上寝てしまうと、起きたあとのだるさ(睡眠慣性)も出てきます。


「8時間眠らなきゃ」を、いったん手放す


これは大事な話なのですが、実は「8時間は眠らないと」という思い込みそのものが、不眠を作ってしまうことがあります。


一晩に眠れる時間には限りがあって、必要な睡眠時間は人によって本当にバラバラです。だいたい6〜8時間が目安で、6時間で足りる人もいます。「8時間眠ろう」と長く布団にいるほど、眠れない時間が増えて、「やっぱり今日も眠れなかった」と感じてしまう。眠くなってから布団に入る。それくらいでちょうどいいんです。


同じ理由で、休日の「寝だめ」で平日の睡眠不足を取り戻すこともできません。むしろリズムが崩れて、かえって眠りにくくなります。


眠れない夜は、布団で粘らない


眠れない夜ほど、「早く寝なきゃ」と焦りますよね。でも、眠りは頑張って手に入れるものではありません。焦れば焦るほど、目が冴えてしまう。


布団に入って15〜20分たっても眠れないなら、いったん布団から出て、暗めの部屋で静かに過ごし、眠気が来てから戻る。「布団=眠れない場所」という結びつきを作らないことが、地味にすごく効きます。


それでも続くなら──「眠れない」の裏にあるもの


ここまでの工夫をしても、眠れない状態が2週間以上続く。日中の眠気や集中力の低下で、仕事や生活に支障が出ている。そんなときは、生活を整えても眠れない、別の原因が隠れていることがあります。


ストレスや、うつ・適応障害:不眠は、心の不調がいちばん早く出るサインのひとつです。うつ病だと、かなり高い確率で不眠がついてきます。「眠れない」を入り口に受診して、その奥にうつが見つかることは、少なくありません。


睡眠時無呼吸症候群:大きないびきや、日中の強い眠気がある方は要注意です。これがあると、いくら生活を整えても、眠りの質が上がってこないんです。


働きすぎ・生活リズムの乱れ:長時間労働は、そのまま睡眠時間を削ります。退勤から次の出勤までの間隔(勤務間インターバル)が12時間を切ると、休養感が下がって疲れやストレスが増える、というデータもあります。産業医として、ここはよく見ているところです。


「眠れないだけ」と軽く見ないでほしい。不眠は、体と心からのサインであることが、本当に多いんです。


睡眠薬は、「悪者」ではありません


「睡眠薬は怖い」「クセになりそう」。そう言って受診をためらう方、すごく多いです。その気持ちは、よく分かります。


でも、最近は依存性に配慮した新しいタイプの薬も増えていて、選択肢はずいぶん広がりました。医師と相談しながら、症状やタイプに合った薬を、必要な期間だけ使う。そうすれば、睡眠薬はむしろ回復を助けてくれる、心強い味方になります。


大事なのは、自己判断で量を増やしたり、急にやめたりしないこと。薬への不安も含めて、遠慮なく主治医に話してほしいです。


それから、不眠の治療は薬だけではありません。「認知行動療法(CBT-I)」という、考え方や生活習慣からアプローチする方法も、効果が確かめられています。ここまでお話しした生活の見直しは、まさにその土台。薬と生活の工夫は、どちらか一方ではなく、両輪なんです。


(よく使われる睡眠薬「デエビゴ」については、別の記事で詳しく書いています。気になる方は、あわせてどうぞ。)


こんなときは、一度ご相談ください


・眠れない状態が、2週間以上続いている


・日中の眠気やだるさで、仕事や生活に支障が出ている


・眠れないことがつらくて、夜が来るのが怖い


・大きないびきや、日中の強い眠気がある


「これくらいで受診していいのかな」と迷う方が多いのですが、早すぎる受診なんてありません。むしろ、こじれる前のほうが、立て直しはずっと早いです。


心療内科で、できること


睡眠衛生のアドバイスは、ネットにもあふれています。ただ、一律の情報をなんとなく試すだけでは、なかなか効かないことも分かっています。効くのは、その人の生活や背景に合わせて、優先順位をつけて組み立てた指導です。ひとりで頑張るのとの違いは、ここだと思っています。


当院(Stay Fit Clinic)では、眠りの悩みに対して、こんなことができます。


・睡眠の状態を丁寧にうかがって、不眠のタイプと背景を見立てる


・あなたの生活に合わせて、睡眠衛生の見直しを一緒に組み立てる


・必要なら、依存性に配慮しながら薬を調整する


・眠れない背景にあるストレスやメンタル不調も、まとめて診る


・働く方には、産業医の視点から、働き方(長時間労働など)への配慮も一緒に考える


「眠れない」を入り口に、心と体を丸ごと診られるのが、心療内科の強みだと思っています。


まとめ


・「眠れない」には入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害のタイプがあり、量(時間)と質(睡眠休養感)の両方が大切


・まずは薬より生活の見直し。朝〜日中の光と活動/夕方以降のカフェイン・寝酒・タバコ・寝る前スマホを減らす/昼寝は30分以内/「8時間眠らなきゃ」を手放す


・2週間以上続く・日中に支障が出るなら、うつや適応障害、睡眠時無呼吸が隠れていることも


・睡眠薬は悪者ではない。正しく使えば回復を助ける。認知行動療法(CBT-I)も有効


・受診をためらわないで。早すぎる受診なんてありません


ここまで読んで、こんな思いはありませんか?


「自分の不眠は、ただの寝不足じゃないのかもしれない」


「眠れないことを、一度ちゃんと相談してみたい」


Stay Fit Clinicは、港区南青山・外苑前駅近くにある、働く人のための内科・心療内科です。産業医として15社以上を担当している院長が、不眠の背景にあるストレスやメンタル不調まで含めて、一緒に見立てて立て直します。


「行くか迷っている段階」での相談でも構いません。






📩 英語でのお問い合わせも歓迎しています


Stay Fit Clinic 院長 薮野淳也


心療内科医・産業医・社会医学系専門医


著書『産業医が教える 会社の休み方』(中公新書ラクレ、2024年)


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参考文献


・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」


・日本睡眠学会『睡眠医療ネクサス』Vol.1 No.3(2025年)「睡眠衛生」


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