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休職したくないときの産業医面談|就業配慮として相談できること

  • 執筆者の写真: stayfitclinic
    stayfitclinic
  • 8月5日
  • 読了時間: 10分

更新日:6 日前

「体調はつらい。でも、できれば休職はしたくない」


「今の働き方を少し調整できれば、仕事を続けられるかもしれない」


「産業医に相談したら、すぐに休職を勧められるのではないか」


こうした不安を抱えながら、産業医面談を受ける方は少なくありません。


産業医面談は、休職を決めるためだけの場ではありません。体調と仕事の状況を整理し、安全に働き続けるために、どのような就業配慮が必要かを検討する場でもあります。


一方で、希望した配慮がすべて実現するとは限りません。産業医は医学的な立場から意見を述べますが、実際の働き方は、会社の制度、業務内容、人員体制、安全面なども踏まえて決まります。


この記事では、産業医・心療内科医として働く人を支援してきた立場から、休職をできるだけ避けたいときに産業医面談で相談できることと、就業配慮の限界について解説します。


この記事のポイント 産業医面談では「休職したくない」という希望を伝えて構いません。ただし、希望だけで結論が決まるわけではありません。 本人の健康状態、医学的な必要性、仕事の性質、会社が実施できる範囲をすり合わせることが大切です。
休職を避けながら働き方の配慮について産業医に相談する会社員

「休職したくない」と、最初に伝えてよい


産業医面談では、まず自分の希望を率直に伝えて構いません。


たとえば、次のような言い方です。


「休職はできれば避けたいと考えています。ただ、今の負荷のまま働き続けるのは難しいです」


「仕事を続けるために、一定期間、残業や業務量を調整できないか相談したいです」


「在宅勤務が難しい場合、ほかにどのような調整が可能でしょうか」


大切なのは、単に「休みたくない」と伝えるだけでなく、現在どの仕事で困っているのか、何が変われば働き続けられそうかを一緒に説明することです。


産業医は、その情報と健康状態をもとに、働き続けることによるリスクや、必要と考えられる就業上の措置を整理します。


ただし、状態によっては休養や医療機関の受診を勧めることがあります。産業医面談は「休職を回避する方法を必ず見つける場」ではなく、健康と仕事を両立できる範囲を見極める場と考えるとよいでしょう。


産業医面談で相談できる就業配慮


就業配慮とは、健康状態に応じて、仕事の負荷や働き方を一時的に調整することです。


代表的なものとして、次のような例があります。


  • 残業や休日出勤の制限

  • 深夜勤務、交代勤務、出張の制限

  • 一時的な業務量の軽減

  • 判断責任や対人負荷の大きい業務の調整

  • 勤務時間の短縮や時差出勤の検討

  • 在宅勤務や出社頻度の調整

  • 通院時間の確保

  • 一定期間ごとの産業医面談による経過確認


どの配慮が適切かは、診断名だけでは決まりません。


たとえば、同じ不眠でも「朝の通勤が難しい方」と「夜間対応のあとに体調を崩す方」では、必要な調整が異なります。症状そのものだけでなく、症状が仕事のどの部分に影響しているかを具体的にすることが重要です。


なお、時短勤務、在宅勤務、配置転換などの制度が利用できるかどうかは、会社の就業規則や雇用形態、職種によって異なります。


産業医面談後の就業配慮には限界がある?


ここは、産業医面談を受ける前に知っておいてほしい大切な点です。


会社には、労働者が安全に働けるよう必要な配慮を行うことが求められます。一方で、本人が希望した配慮が、そのまま実施されるとは限りません


配慮には、主に次のような限界があります。


1. 本人の希望と、医学的に必要な配慮は同じとは限らない


「今の部署から異動したい」「完全在宅にしてほしい」と希望しても、それが健康上必要な措置なのか、ほかの方法で負荷を下げられるのかを検討する必要があります。


産業医は本人の希望を聞いたうえで、医学的な必要性や安全性を整理します。本人の希望を会社へそのまま伝える代理人ではありません。


2. 産業医は、配慮を会社に命令する立場ではない


産業医は、医学的な立場から会社へ意見を述べ、必要に応じて勧告を行います。しかし、具体的な業務分担、勤務制度、人員配置などを最終的に決めるのは会社です。


産業医の意見は重要な判断材料ですが、それだけで働き方が自動的に決まるわけではありません。


3. 会社が実施できない配慮もある


たとえば、現場での対応が不可欠な仕事では、完全在宅勤務が難しいことがあります。少人数の職場では、担当業務を長期間ほかの人へ移すことが難しい場合もあります。


会社は、就業規則、業務の性質、人員体制、本人や周囲の安全などを踏まえて、実施可能な方法を検討します。


希望した方法が難しい場合は、「在宅勤務ができなければ何が代替案になるか」「業務量を減らせない場合、期限や優先順位を調整できるか」のように、別の方法を探すことが大切です。


4. 配慮は、期限と見直しが必要になる


就業配慮は、体調を維持しながら働くための一時的な措置として設定されることが多くあります。


「まず1か月」「次回の受診まで」など、一定の期間を決めて実施し、体調と業務状況を確認しながら、継続、変更、解除を検討します。


期限を決めることは、配慮を打ち切るためではありません。配慮が本人の回復に役立っているか、職場で無理なく運用できているかを確認するためです。


5. 配慮をしても、安全に働けない状態はある


睡眠や食事が大きく崩れている、通勤や基本的な日常生活が難しい、注意力の低下によって本人や周囲の安全に関わるなど、就業配慮だけでは対応しきれない場合があります。


そのようなときに無理に働き続けると、不調が長引いたり、回復までに時間がかかったりすることがあります。状態によっては、一時的な休養や治療を優先することも選択肢です。


休職は失敗ではありません。働き続けることと休むことのどちらが安全かを、その時点の状態に応じて考える必要があります。


主治医・産業医・会社は、それぞれ役割が違う


就業配慮を考えるときは、それぞれの役割を分けて理解すると整理しやすくなります。


主治医


診断と治療を担当し、症状や治療経過から、療養上必要と考えられることを医学的に判断します。必要に応じて、診断書や意見書に就業上望ましい配慮を記載します。


ただし、主治医は実際の業務内容や会社の制度を十分に把握していないことがあります。


産業医


健康状態だけでなく、仕事内容、勤務時間、職場環境などを踏まえて、安全に働けるかを評価し、会社へ就業上の意見を伝えます。


産業医は治療を担当する主治医とは役割が異なり、通常は診断や継続的な治療を行う立場ではありません。


会社


主治医や産業医の意見、本人の希望、職場の状況を踏まえて、実際に行う就業上の措置を決定します。


そのため、就業配慮は「医師に診断書を書いてもらえば決まる」のではなく、本人・主治医・産業医・会社の情報をすり合わせて決めていくものです。


面談内容は、どこまで会社に伝わる?


産業医には守秘義務があります。面談で話した病歴や家庭事情などが、そのまますべて上司や人事へ伝えられるわけではありません。


一方、会社が残業制限や業務調整などを実施するには、就業上必要な情報を共有する必要があります。


たとえば、会社へ伝えられる可能性があるのは、次のような内容です。


  • 現在の就業が可能か

  • 避けることが望ましい業務や勤務形態

  • 必要と考えられる就業制限

  • 配慮を検討する期間

  • 再面談や受診の必要性


診断名、治療の詳細、面談で話した具体的な悩みなどは、就業上の措置に必要な範囲へ整理して扱うことが原則です。ただし、法令に基づく面談か任意の相談か、会社の健康情報取扱規程、安全上の必要性などによって取扱いは異なります。


不安がある場合は、面談の最初に次のように確認しましょう。


「今日話した内容のうち、会社には何が伝わりますか」


「誰に、どの範囲まで共有されますか」


「会社へ意見を伝える前に、内容を説明してもらえますか」


面談前に整理しておきたい6つのこと


面談時間は限られています。次の項目をメモしておくと、状況が伝わりやすくなります。


  1. いつから、どのような不調があるか

  2. 仕事のどの場面で困っているか

  3. できている仕事と、難しくなっている仕事

  4. 残業、通勤、出張など、負担が強くなる条件

  5. 希望する配慮と、受け入れられる代替案

  6. 通院状況と、主治医から伝えられていること


特に、「希望する配慮」と「それが難しい場合の代替案」を分けておくと、現実的な話し合いにつながりやすくなります。


たとえば、第一希望が在宅勤務であっても、難しい場合には時差出勤、残業制限、電話対応の軽減など、負担を下げる別の方法が考えられるかもしれません。


産業医面談のあとに確認したいこと


面談を受けたら、結論だけでなく、次の点も確認しましょう。


  • 会社へどのような意見が伝えられるか

  • 会社側の決定は、誰から説明されるか

  • 配慮を開始する時期と期間

  • 配慮中に困った場合の相談先

  • 次回の産業医面談や見直しの時期

  • 主治医の診断書や情報提供が必要か


就業配慮は、一度決めて終わりではありません。実際に働いてみて体調がどう変わったかを確認し、必要に応じて見直していくことが重要です。


産業医面談の前に、医療機関へ相談した方がよいこともある


まだ医療機関を受診しておらず、不眠、気分の落ち込み、動悸、食欲低下、集中困難などが続いている場合は、産業医面談とは別に医療機関への相談も検討してください。


産業医は働き方について医学的な意見を伝える役割ですが、診断や治療を継続的に行う主治医とは役割が異なります。


主治医に相談する場合は、「休職の診断書がほしい」と結論だけを伝えるのではなく、現在の症状、仕事への影響、休職はできれば避けたいことも含めて相談するとよいでしょう。診断書や就業配慮の必要性は、診察時の医学的所見と個別の状況を踏まえて判断されます。


心療内科で相談できる就業配慮については、「休職ではなく『勤務配慮』を相談したいとき、心療内科でできること」でも詳しく解説しています。


まとめ


  • 産業医面談では「休職したくない」という希望を伝えてよい

  • 現在困っている仕事と、何が変われば続けられそうかを具体的に整理する

  • 残業制限、業務量、勤務時間、出社頻度などを相談できる場合がある

  • 本人の希望と、医学的に必要な配慮は同じとは限らない

  • 産業医は医学的な意見を述べるが、具体的な措置を決めるのは会社

  • 会社の制度、業務内容、人員体制、安全面によって、実施できない配慮もある

  • 配慮には期限を設け、体調と業務状況に応じて見直すことが大切

  • 配慮だけでは安全に働けない場合は、休養や治療を優先することもある


休職したくないという気持ちは、隠す必要のない大切な希望です。


ただし、「休まないこと」だけを目標にすると、必要な治療や休養が遅れることがあります。産業医面談を、休職を避けるための交渉の場ではなく、自分が安全に働き続けられる条件を整理する場として使ってみてください。


Stay Fit Clinicで相談できること


Stay Fit Clinicは、港区南青山・外苑前駅近くにある、働く人のための内科・心療内科です。


当院は勤務先の産業医として会社の就業措置を決める立場ではありませんが、主治医として症状を評価し、治療と仕事の両立、会社への伝え方、診断書や意見書の必要性を一緒に整理できます。


診断書の発行や記載内容は、診察時の医学的所見と個別の状況に基づいて判断します。受診によって、希望する診断書や就業配慮が保証されるものではありません。




Stay Fit Clinic 院長 薮野淳也


心療内科医・産業医・社会医学系専門医


著書『産業医が教える 会社の休み方』(中公新書ラクレ、2024年)


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参考資料



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